お墓のふたの開け方

お墓の蓋

墓じまいをする前などに、お墓の中の遺骨を確認したい時に、そのふた(拝石)をあける仕事は、石屋さんでないといけないという決まりは無く、自分で開けても法的には全く問題ありません。

しかし、結構重たいことがありますので、怪我をしないようにしてください。

また、開けた時にふたを不安定な置き方をして覗いてみたりすることもいけません。石が倒れてきたら危険です。

墓じまいで壊すつもりなら傷が付いても構いませんが、中を見てみるだけでお墓をその後も使い続けるのなら、なるべく丁寧に行いましよう。タオルなどで養生をしてから、手袋をつけるなどしてください。

専門の業者は普通ではなかなか手に入らないような道具を持っています、傷をつけたくなかったら、あるいは不安でしたら、石材店に頼みましょう。

お墓の蓋を開ける目的

お墓の蓋を開ける

お墓の蓋を開ける主な目的は、墓じまいや改葬の必要が出て来たので事前に中に誰の遺骨が納められているのかを確認しておきたい、という理由がほとんどです。

墓地使用者が一人で確認して構いませんが、時にお墓の中に誰の遺骨か分からない人の遺骨が入っていたり、あるはずのお遺骨が無かったりすることが実際によくありますので、可能ならば2人以上で確認した方が、証人が居るという意味で何か疑われるような心配をせずに済みます。

また複数の人で作業すれば安全の度合いが増します。

誰の遺骨が、何のために!これは困った、どうしよう?…お墓の中に知らない人の遺骨がある

また、墓じまいをするということは、お墓に収められていたお遺骨は改葬するか散骨することになりますので、事前に改葬の手続きが必要です。また、特定の人の遺骨のみ取り出す場合にも、改葬ということになります。

墓じまいしてから散骨したいとお考えの方は、改葬許可申請書の提出書類で躓いてしまうことがあります。

お墓の蓋を開けるのに丁寧な方法

感謝の墓じまい

お墓の蓋を開ける時に最も丁寧な方法は僧侶を呼んでお祓い供養してもらうことです。

そしてお墓の蓋を開ける作業を石材店に頼むことです。

蓋を開けるだけですから工事をする時の閉眼供養(抜魂供養)の必要はありませんが、神聖な扉を開けるのにはなるべく丁寧な方法である方が良いのです。

この場合の供養は「お断り」とも言えるもので、ご先祖様が静かにお休みになっている空間を、何の断り無しにいきなり開けることは、トイレのドアをノックもせずにいきなり開ける、お風呂のドアをいきなり開けることと同じこと、「大変に申し訳御座いませんが開けさせて頂くことを御了承くださいませ」という供養になります。

昔からお墓に関しては失礼なことをすれば必ずと言っていいほど罰が当たったとか、怪我をした、得体のしれない病気になったなどの話が付き物で、石材店の方はそのことを良く知っていますので、工事などをするには僧侶のお祓いが無かったら請け負うようなことは致しません。

お墓の蓋を開ける時の心がまえ

お墓の礼拝

お墓は神聖な場所であり、死者が眠る場所でもあります、お墓の蓋は黄泉の国の入り口でもあるという崇高な気持ちを持ってください。

いきなり開けるのは無謀です。
まずは通常のお墓参りと同じ所作をします、お花をあげ、線香を焚き、合掌して蓋を開けさせて頂く旨のお断りをいれ、神聖な気持ちで開けさせて頂きましょう。

蓋を開ける前にかける言葉を忘れずに

お墓に声を掛ける

出来ましたら言葉として大きな声で言って下さい。

これから〇〇家の墓地の故人様の確認の為、冥界の蓋を開けさせて頂きますが、ご先祖様のお墓が無縁にならぬように致す事で御座います、大変に失礼では御座いますが、開けさせて頂くこと何卒ご了承下さいます様、よろしく御願い致します

言葉と言えども言霊ですから必ず効果があります。
何も言わずにいきなり開けますとたぶん亡き人が驚いて叱られます。

理屈としては、自分の家のお墓は自分で開けても構わない、という理屈で、法律違反でもありませんし、誰からも非難されることではありませんが、一番丁寧な方法は、僧侶に拝んでもらいながら石屋さんに開けてもらうという方法です。

ご先祖様と言えども目に見えない存在ですのであまり勝手な事をしたり礼儀知らずであったり無謀な事をしますと、目に見えない方の怒りを買うということもありますので、くれぐれも細心の注意を払ってくださいませ。

私は高野山真言宗やすらか庵の僧侶もしておりますので、もし必要でしたらお呼びください、どこにでも伺います。

お墓の蓋を開ける具体的な方法

具体的方法のイラスト

お墓を開けるには、必要な道具をそろえたり、お墓の構造を把握しなくてはなりません。
お墓の構造については、年式やスタイル、地域性が関係しますので、自身の家のお墓がどれに該当するのかよく確かめてください。

お墓の蓋を開ける道具

お墓の蓋を開ける道具

お墓の蓋を開けるには道具が必要で、最低限必要な道具としては

  • バール2本
  • 手袋
  • タオル

この他にあった方が良いものとしては

  • 懐中電灯
  • バスタオルか毛布(捨てても構わない物)
  • 木切れ、べニア板
  • ヘルメット
  • 金づちまたは玄能
  • タガネ

バールが2本必要な理由は、蓋石を開けるのに2か所で少しずつすき間を広げていったり、とりあえず1本のバールをすき間に挟んでおいてから、もう1本のバールで更に起こすという使い方をするからです。

お墓の中は意外と暗いですから頭に付けるタイプのヘッドライトがあった方が良いかもしれません。

木切れやべニア板はバールなどを使う時に、お墓に傷をつけないために使います。
バスタオルや毛布も、自身の家のお墓やお隣近隣のお墓の保護に使います。カロート内に潜るときにも使います。

関東と関西ではお墓のつくりが違う

関東と関西の違い説明イラスト

お墓の作り方は関東と関西では違います。
火葬の後に持ち帰る遺骨の骨壺が関東では7寸であるのに対し、関西では5寸であり、関東の方が骨壺が大きいので、お墓の下には大きなカロート(納骨室)があって、その上にお墓の石とふたが載っているのです。

ここでは主に関東方式のお墓のふたの開け方を掲載しています。

接着剤はゴムかモルタル

お墓の蓋

お墓のふたは、石がずれないようにという目的と、カロートの中に水が入らないようにという目的のためにモルタルかゴムの接着剤で止められています。

モルタルとは、セメントと砂を水で練ったもので、安価で使いやすい反面、衝撃に弱く、長い年月で剥がれてきます。

ゴムはチューブに入ったシーラーと呼ばれるもので、弾力性があり、耐震性に優れ、値段が高いですが長期間の使用に耐えますが、万一はがす時には剥がしにくいので注意が必要です。

墓石-シーラー

年式が古ければモルタルで、年式が新しければゴムで耐震という傾向にあります。

お墓の蓋は、納骨する度に開けたり閉めたりしますので、ある程度は開けやすいように施工しないと、後が大変です。

お墓のふたの開け方-和式の場合

お墓のふたの開け方

和式のお墓の場合には、ほとんどこの形式です、

  1. 香炉を手で持って他の場所に移動します
  2. ふたの石の片側を持ち上げて開けます

気を付けなければいけない点として

  • 綺麗な石で傷を付けたくなかったら、石屋さんに頼みましよう。
  • 大きめのバールが必要です
  • 石は重たいですから、1人よりも2人でやった方が良い
  • ふたの石はモルタルで接着していることがあります、モルタルは大抵、バールをすき間に挟んでこじれば、はがれます。
  • コーキング材などでシールしていることがあります、ゴム系のコーキング材でしたら、大きめのカッターで石を傷つけないように気を付けながら切ってから開けます。

巨大なお墓の蓋の開け方

巨大なお墓

20㎡を超えるような巨大なお墓の場合にはカロートの蓋も大きくて2重(蓋が2枚あるという事)になっていたりしますので、力のある人が2人以上いないと開けることが出来ません。
またカロートも地下室になっていて、階段で降りていくような巨大なカロートになっています。

コンクリートの厚さも20cm以上はあり、広さと深さも相当にありますので、壊す時の費用がかさみます。

墓じまいの費用も場合によっては100万円を超えるような費用になることが多いですが、造った時もそれなりの費用をかけて造ったのですから、壊す時もそれなりの費用が必要なのは仕方のないことです。

カロートの中

お墓のふたの開け方-洋式の場合

お墓のふたの開け方

先ほどの和式と基本は同じです

  1. この場合には香炉は花立と独立していますので、一つずつ外して別の場所に移動します
  2. ふたの石を斜めにずらし、下から手を入れるすき間を作ります
  3. 中を確認するだけでしたら、少しずらして出来たすき間から中を覗きます、このままずらし続けて手前の石の上に乗せれば、完全に開きます。あるいは少しずらした時点で下から手を入れて起こして立ててから、横にずらしてしまえばすっきりします。

芝生墓地のふたの開け方

芝生墓地のふたの開け方

芝生墓地の墓じまいは面積が小さく、使っている石も少ないので、最低の1㎡料金で済みます。

ふたの開け方は

  1. 香炉を別の場所に移動します
  2. ふたをずらします

千葉の館山などのお墓

千葉の館山のお墓のふた

お墓が一段高い石室の上に設置されています。手前の2か所に手を入れるようになっているのがふたで、少し持ち上げて手前にずらします。

関西式

関西式-ふたの開け方

関西式は花立の石を右か左のどちらかにずらしてみますとお墓の中の空洞が見えます。

お墓の蓋

骨壺は地下のカロートに入っているというよりは、お墓の石の中に納められているという感じです。

カロートの大きさは関東よりも小さいですが、それは亡き人の火葬後の遺骨を入れる骨壺が関東サイズが7寸であるのに対して、関西サイズが5寸であるからです。

関東と関西では収骨の仕方が違う

関西では骨壺が小さいので、このような仕組みになっていますし、間口が狭くても骨壺が入るのです。

お墓に蓋が無い時

土葬

明治時代のお墓には蓋がありません。
それは土葬だからです。また、たまにですが何らかの理由で土葬の骨を掘り上げて壷に入れたものを墓石の下に埋葬しているようなこともあります。

土葬について

土葬に於ける座棺と寝棺

土葬のお墓の構造は上のイラストのように名前が彫ってある竿石のしたに台石があるだけのシンプルな構造で、お墓の石を取り払ってもカロートのようなものは一切ありませんし、骨壺も出てきません

また土饅頭のように土がこんもりと盛り上がっていて、線香立てや花立だけが置いてある場合はその下に土葬されている可能性が高いですが、墓石はありません。

この場合にはお金が無かったか、後で墓石を作るつもりで結局出来なかったかのどちらかです。

土葬の場合にはお墓の石を撤去して、その下2メートルぐらいまで掘って遺骨を収集します。

遺骨収集

土葬の場合には重機を入れることが出来ればパワーショベルで掘れば早いです。

土葬の重機による掘削

しかしお遺骨が出て来たら後は手作業で遺骨を集めないといけません。

山の上の不便な所にあるお墓などではスコップ一つで掘り進めますので、大変に重労働ですし、時間もかかります。

土葬のお墓はどうしたら良いですかエンター

両墓制としての祀り墓

両墓制

両墓制とは遺体を埋葬する場所と祭祀を行う場所を別にする方法で、遺体を埋葬するための墓を埋め墓と言い、墓参りをしたりして祭祀を行う場所を参り墓と言い、土葬の時代の風習ですが、明治時代までこの風習は日本の至る所で行われていました。

「参り墓」は一見普通のお墓と何も変わりませんが、納骨室が無いのが特徴です。

「埋め墓」は共同墓地みたいな役割をしていましたので、誰の遺体がどこに埋めてあるか分からないということがあります。

両墓制の基本的な概念としては、埋め墓に埋められた遺体はそこで土に還り、供養などの祭祀は参り墓で行うことで、集落の者が共同で埋葬場所を使うことにより、恒久的に埋葬場所を再利用することが出来るということなのです。

お墓の蓋を開けたら骨壺を出してみる

せっかく蓋を開けたのですから、カロートの中から骨壺を取り出してみましょう。
骨壺を取り出すには中に体を入れてから、手で取り出すしか方法はありません。

上半身をカロートの中に入れるか、足からお風呂に入るようにカロートの中に入るかのどちらかです。

汚れてもいい服を着ておくか、不要な毛布などを準備して引いておき、くれぐれも石の角に頭をぶつけたり、立てかけた蓋の石に挟まれないように注意して骨壺を取り出します。

骨壺の蓋が開かない、困った、どうしよう!?…骨壺のふたの開け方エンター

カロートから骨壺を取り出す

骨壺を取り出しましたら必ず水抜きをしてください。骨壺の中には長い年月の間に水か溜まっています。骨壺の蓋をしっかりと押さえてから横向きにすればチョロチョロと水が出てきます。

お墓の中の骨壺

お墓の中の蓋が閉まった骨壺に水が溜まる理由とは…骨壺に水が溜まる理由エンター

お墓から取り出した骨壺は必ず水抜きしましょう…骨壺の水抜きの方法エンター

また、稀にですが骨壺が割れていることもあります。…カロートの中で骨壺が割れていたエンター

骨壺の水抜き

水抜きが済みましたら骨壺に書いてある名前などを確認してから綺麗な布で拭いてください。文字が書いてあるのは骨壺の胴体の部分か、蓋の裏です。
何も書いてないこともあります。

こんなことってあり!?…お墓に知らない人の遺骨

カロートの中の骨壺

お墓の中が骨壺で一杯に、もう入らない!?…エンター

墓じまい後に遺骨をどうするか

墓じまい後の遺骨

一旦埋葬されたお遺骨は改葬することしか出来なくなります。
改葬とはお墓からお墓への引っ越しのことです。室内納骨堂に納骨される方もおられますし、公営の霊園でしたら合葬墓に移すということも可能な所があります。

寺院の永代供養は、聞こえは良いですが合同葬であることが多く、最初の何年間かは個別に供養してくれますがいつまでもは個別供養はしてくれません。
永代供養の内容が不明であったり、高額過ぎる傾向があります。
ご契約の前によくご確認するのがよいでしょう。

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