墓じまいの仕事をしていますと、いろいろと考えさせられます。お墓というものは、ずっといつまでも残るものであり、それは残すために作ったものであるからです。
死後にお墓が残れば、もしかしたら誰かが会いに来てくれたりするかもしれないし、石に名前を彫っていれば、誰かが見てくれるかもしれない。死んだ後も自分のことを忘れないでいて欲しいという気持ちの表れなのです。
しかしそういう思いのこもったものを撤去するということは、少々むごいようですが、仕方のないことで、誰からも見向きもされないお墓が荒れ果てていくことのほうがむごいことなのです。
人間の中にある何か残そう気持ちは、放っておいても子が出来る、これは人間としての本能であります。その残したいという本能を、物として残すのではなくて、心として残すということが大切なことであります。
心が残ればそれは本当に大切なものであれば、また次の人にも伝わって残っていくはずです。