草葉の陰から

草葉の陰からご先祖様が見守っています、という言い方がありますが、これは土葬の頃に亡き人の遺体を土に埋めてしばらくすると草や木が生えてきて、ご先祖様が草の生えたお墓の下から見守っているということです。

そして土葬以前の時代でも、遺体を放る(屠る-ほふる)場合には遺体が動物に食べられたり、腐敗して土に還り、その場所には草や木が生えてくるので、遺体が自然に還るという意味では自然に任せる自然葬であり、今の時代のように墓じまいなどは無縁の時代であったと言えます。

「葬」という字も「死」が上と下の「草冠」に挟まれた字であり、死ぬこと自体が自然に還ることであったのです。

今の時代、お墓に草が生えますと、「草葉の陰からご先祖様が見守ってくれている」なんて呑気なことを言ってられません。現代風に整備された墓地は自然に還ることを許してくれません。真の意味で「埋葬」する場所ではなくなってしまっているのです。