骨壷に入っている亡き人のお遺骨には実に様々な異物や不純物が混入していて、立会い粉骨の時などにはそういった物をお見せしますと、皆さん一様に驚かれますが、一体どういうことなのでしょうか。

遺骨以外の物

骨壺に入ったお遺骨をそのままお墓に納骨するような場合には決して気が付かないことなのですが、散骨するために粉骨する時になって初めて骨壺に入っている不純物の存在に気が付くのです。

それは釘、ネジ、ホッチキスの針などの棺桶に係る金属や歯の詰め物、義歯、セラミックなどの口腔内治療物や体内に埋め込むインプラント器具や骨折治療の金属、副葬品の硬貨、ネックレス、数珠、衣類の金具やボタン、ジッパーなど実に様々です。

火葬場では大きなマグネットを使って異物を取り除いてくれる所もありますが、それでも磁石に付くものを簡単に取り除いてくれるぐらいです。

遺骨に異物が混入していても、お墓に納骨するには何の問題も無いからなのです。

しかし、散骨などの理由で粉骨する場合に、意外と厄介なのが、この異物なのです。

遺骨の異物

これは骨壷の中に実際に混入している異物です、金属や非金属、石など様々なものが入っています。

実際の不純物

1体のお遺骨に含まれていた異物です、こんなにたくさんありました。もしこれを取り除かないで強力粉砕機で粉砕してしまうと、粉砕されずにかなり混入しますし、粉砕機の刃がガタガタになります。

そして金属片入りの遺灰を散骨することは地球環境には良くないと思います。

ホッチキスの針

ホッチキスの針

異物の中で最も多いのがホッチキスの針です。

棺おけの内張りなどに大量に使われていますので、火葬場で取り除いてくれなかったら大量に含まれます。

火葬場で取り除いてくれていても、取り残しが必ずといっていいほど含まれています。

磁石があれば簡単に取り除けますが、火葬時に遺骨に癒着しているものは、粉骨しながら丁寧に取り除くことになります。

釘-遺骨の不純物

異物の中で次に多いのが釘です。棺おけに使われているものですが、火葬する前に棺おけの蓋を閉めて、石や金槌で釘打ちの儀式をした時の釘は大きく、棺おけの部品として使われている釘は小さいです。

鋲みたいな釘が使われていることもあります。

これらの釘は比較的大きくて目視でも取り除けますが、磁石に付ので、比較的取り除きやすいのが特徴です。

歯の詰め物やインプラントなど

歯の詰め物、インプラント-遺骨の不純物

歯の治療を全くしたことが無くて、全ての歯が健康な方はとても少ないものです。

ほとんどの方が歯の治療を受けた経験があることでしょう。

歯の詰め物などは、亡くなった時に外すようなことはできませんので、そのまま残ります。

磁石には付かないものばかりですが、比較的大きなものばかりなので、目視で取り除くことが可能です。

金属類

金属類-遺骨の不純物

おそらく歯の詰め物や棺おけの部品なのでしょうけれど、副葬品として入れた物に付属していた金属の塊が入っていることがあります。

これらのものは、遺骨に融着してしまっていることが多く、粉骨しているうちに遺骨から外れますので、外れてから取り除きます。

硬貨

硬貨-遺骨の不純物

本物の硬貨は火葬の際の副葬品として入れてはいけない物ですが、昔から三途の川の渡し賃として死に装束の頭陀袋に入れるという土葬時代の習慣がありましたので、火葬になっても硬貨をいれる習慣がそのまま残っていて、その影響で結構入っていることがあります。

現代ではあまり見かけないことですが、少し古い時代のことで、火葬場の職員の方もこれを取り除くと横領になることを心配してか、そのまま骨壷に入っています。

火葬時の高温で変形したり、溶けたりしています。

貨幣損傷等取締法では、第1項 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。

とありますので、本来は軽犯罪になってしまいますが、亡くなった人に貨幣を添えることは古くからある風習でもあり、黙認ということでしょう。

近年は火葬の際には、故人様の死に装束の胸元に下げた頭陀袋の中に紙で作った硬貨を入れることが広く行われています。

アクセサリーや数珠

アクセサリーや数珠など-遺骨の不純物

故人様の胸元に付けていたペンダントなどのアクセサリーや手首にはめていた数珠も混入しています。

プラスチックの数珠は溶けてなくなりますが、真珠や硬質素材の数珠はそのまま残ります。

衣類のボタンやジッパーなど

ボタンやジッパー-遺骨の不純物

写真は金属製のジッパーで、実際はとても小さいものですが、これを見つけたら大量に入っているということです。

根気よく取り除くしかありません。衣類に関しては金属製のボタンが混入していることもあります。

骨壷の中に入っていた意外なもの

私が千体以上のお遺骨を粉骨させて頂いた中で、実際に混入していた意外な物として、メガネ、時計、骨折を治療した際のセラミックや金属製の板とネジなど、実に様々な物がありました。

時計やメガネは火葬した後に、本人愛用のものを骨壷に入れることはよくありますが、火葬炉の中に入れられたメガネはぐにゃぐにゃに変形し、ガラスも溶けてしまっています。

骨壺に遺品を入れること

先に記しましたように、メガネや時計やアクセサリーのような装飾品を、火葬後の骨壺の中に入れるのは自由です。

しかし火葬前の棺桶に、ガラスやプラスチックをあしらった物や金属や鏡などを入れるのは、それらが燃え残ることによってガスを発生させたり、また火葬炉を傷めてしまったりする原因となってしまいます。

肝心のお遺骨も綺麗に焼けにくくなってしまいますので、ご注意ください。

粉骨する時は不純物を取り除きましょう

散骨するために粉骨する時にはこれらの不純物は必ず取り除いてください。

時には有害物質だったりして環境に悪影響を及ぼすかもしれないからです。

最初にマグネットで磁性の金属を除去してから、後は目視で探し出します、場合によっては粉骨している最中に見つかることもありますが、故人様のお遺骨を綺麗に粉骨して差し上げると思えば、一つ一つの不純物を取り除くという作業も美しい奉仕の行になります。

一緒に立会い粉骨すれば良く分かります

NPO法人やすらか庵では立会いで手作業の粉骨をしていますが、粉骨の作業の際には、こういった不純物についても詳しく説明しています。

棺桶に入れた覚えのないようなものが出て来た時には、それが何であるのか、そしてどうして入っていたのかを紐解けば、忘れてしまっていた記憶が蘇ることもあります。

亡き人のことを思い、分からなかった事実が分かる、それを皆で話して共有する、とても良い供養になります。

私は混入していた物体が何であるのかが大体わかります、そういう意味ではとても貴重な粉骨をしています。